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同人音声サークル「S.Diamante」がお贈りする、【歌】と【ドラマ】で感じる女性向け音声コンテンツ第一弾!
囚われの貴女シリーズVol.1 吸血鬼クロード
Tr01.Arouse blood
Tr02.彼とふたり、シーツに包まれて
Tr03.Bonus Track(piano arrangement)
CV&歌:くなぎ
作詞:S.Diamante
作曲編曲:鈴葉ユミ
イラスト:南浜よりこ
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「あっ……っ」
何回しても慣れない。
柔らかい唇が遠慮がちに首筋に宛がわれ、
直後に首筋に小さな痛みを感じた次の瞬間には……
「っ……」
ただ堕ちて行く。
快楽の沼のようなものへと引きずり込まれる。
それは形容しがたい感覚。
きっと言葉じゃ表現できない。
気持ち良くて、気持ち良くて、ただそれだけ。
俺をこんな風に夢中にさせるのはきみだけだって、
こんな風におかしくするのはきみだけだって、
そう思うとまたきみが愛しくなって、いつも泣きそうになる。
こんな表情絶対見せられないけど。
底なしの快楽と愛情が綯い交ぜになって俺の中に満ちて行く。
きみが俺の血に夢中になっているその瞬間だけ、
俺はどうしようもなくだらしない表情をしているんだ。
「んっ……」
満足したのか、きみは小さな声を漏らして唇を離す。
俯いたきみの表情は髪に隠れてよく見えないけれど、
垣間見える唇の端からは一筋の鮮やかな血が零れている。
髪で隠れた頬に触れ、少しだけ上を向かせる。
紅潮したそこは熱く、火傷しそうだ。
まだ吸血の影響で朦朧とした意識の中で、彼女の瞳が揺れていた。
「俺の血は美味しい?」
優しく問いかける。
彼女を落ちつかせる為でもあった。
「……うん」
小さく頷く。少しだけ笑みを浮かべながら。
まだあどけなさの残る彼女の顔。
けど、俺の血を摂取したばかりの彼女の表情は普段と違って艶やかで、
そのギャップに惑わされそう。
「ここ。零してるよ、……んっ」
赤い唇の端から零れる血に自分の唇を押し当て、
その隙間から舌を差し出し舐め取る。
自分の血を舐めるなんて、そんな日が来るとは思わなかった。
「ん……」
「ふ……っ……」
力が入らないきみは、まるで親に世話をされる子のように俺に体を預ける。
それをいいことに、俺はしばしの白い肌を堪能する。
月灯かりが差し込む静かな部屋に、二人の甘い息遣いだけが響く。
悪くない夜だ。
きみの血は極上の味なのに、自分のはたいして味がしない。
これって体質?
それともきみのこと大好きだから、血まで美味しく感じるのかな。
俺はずっと同族の血を摂取して生きてきた。
罪のない人間を襲って自分の栄養にすることはどうしてもできなかった。
それは酷く野蛮な行為に思えたから。
でも、きみだけは、どうしても欲しかった。
きみに心を奪われたあの日、
俺はまるで理性を失ったただの獣のように、きみを求めた。
食事があんなに美味しく感じたのは、
初めて人間の血を飲んだからではなく、
きみの血だったからだろう。
そう、きみ以外のヒトの血の味を知らないし、これから知ることもない。
きみさえ……
きみだけいればいいんだ。
きみしか、いないんだ。
俺たちは生きるために互いの血を啜りあう。
それは食事と同じ意味を持つが、
それ以上の満足感をもたらしてくれる。
そして満たされた後に漲るこの高揚感。
昂ぶった体は容易には鎮まらない。
「ねぇ……」
彼女のネグリジェの肩ひもに手を掛けると、それをやんわりと阻まれる。
「ダメ?」
「だめ」
「なんで?」
「明日、荊棘の庭園に行くんでしょ?少し早く起きてお弁当作りたいの」
「そんなのきみがやらなくていいじゃないか」
「お城の人に頼めば準備してくれると思うけど、
せっかくのデートだから一緒に作りましょ」
「デート……一緒……」
嬉しそうに彼女がそう言うものだから言葉に詰まる。
"一緒に"という言葉に弱い。
このだだっ広い城の中、独りで過ごしてきた時を考えると、
彼女と一緒に過ごす時間は比べ物にならないほど美しく尊い。
だから俺は片時も彼女を離そうとしなかったし、そんな俺を彼女は理解してくれていた。
「早起きしなくちゃだめだから、早く寝ないと」
「……一緒に作るから、いま一緒にシたい」
「同じこと言って、この前寝坊したのはだれ?」
「……はい、ワタシデス」
こういう場面で彼女は俺より一枚上手だ。
俺は先週の失敗を思い出して大人しくなる。
「わかった。寝よ」
彼女の服から手を離し、体をそっと抱きしめ、そのままごろんとベッドに横になる。
ふかふかのベッドが二人分の体重で小さく跳ねた。
「明日、楽しみだね」
「晴れるみたいだし」
彼女は俺の胸に顔を埋める。
吸血行為の余韻がまだ二人の体を昂ぶらせていたけれど、
きっとこのまま突っ走ったら確実に朝を越えて昼を迎えるから。
出掛ける夜の為に準備する時間が取れなくなる。
ふたりとも体に渦巻く欲望に蓋をして、無理矢理瞳を閉じた。
* - * ー *
次の晩。
空高く青白い月が輝いている。
漆黒の空は、その輝きを受けて紺藍色に染まっているように見えた。
美しい夜。
「♪~」
そのせいもあって、彼女はとても楽しそうだ。
片手に、スコーンやフルーツの詰まったバスケット。
片手で、星を数えながら俺の隣を歩いている。
食事は吸血行為で済むんだから、そんなもの要らないのにって前に言ったことがあるが、
「そういうことじゃない」って少しむくれてしまったので、
彼女のしたいようにすることにしている。
人間だったころの習慣が抜けないのか、
吸血鬼になったいまでは必要のない、俺にとっては無駄だとさえ思える行為を彼女は今でもする。
しかし、その無駄が楽しいと思える時がきたのだから、
俺も彼女に相当惚れているんだろう。昔の俺から見たら馬鹿みたいかも。
「わぁー、綺麗!」
「いい時に来たな」
荊棘の庭園。
腕が良いと評判の庭師に作らせた、大きな英国式庭園だ。
いまはちょうど薔薇の盛りの時季。
色とりどりの薔薇が夜露に濡れて艶やかに咲いている。
この庭園はちょっとした迷路みたいに思えるほど大きい。
俺達ふたりはそこを端から端まで歩いてみることにした。
「あっ、流れ星!」
「え?」
彼女が頭上を指差して声を上げる。
急に立ち止まったので、倣ってそうする。
「どこ?」
「あの辺りをね、流れ星がすーっ、って……わっ!」
急に歩きだした彼女が何かに躓いてよろける。
「あっ……よっ……と」
その体を急いで後ろから抱きとめ、間一髪、転倒を防げた。
「ふぅ……」
これだから目が離せない。
「あ、ありがとう……」
安堵した俺が、その存在を確かめるかのようにぎゅうっと強く抱きしめたのに驚いたのか、彼女の声色は動揺しているように聞こえる。
悪戯心が芽生え、耳に唇を寄せてみる。熱い吐息は白い耳をくすぐる。
「っ!」
吐息に驚いた彼女が腕の中で体を強張らせた。
「こら、危ないだろ?」
「う、うん……」
子どもをあやすように甘い声色を作って囁けば、素直に頷く。
「ねぇ、星だけじゃなくて、俺のことも見てよ」
「う、うん……」
舌で耳朶を軽く嬲った後に柔らかく噛みつけば、面白いくらいにびくんと体が跳ねた。
「ぁ……んっ……」
「ん?どうしたの?」
「な、なんでもない!もう大丈夫だから、離して……?」
急に縮こまってしまった彼女がそう言うものだから、あっさり体を離してやる。
そしてバスケットを持っていない方の手を取り、自分の指を絡ませた。
「こうして、手を繋いでいれば大丈夫だろ?」
「うん……ありがとう」
あっさり解放されたことが意外だったのか、目を丸くした彼女がこちらを見上げる。
いつもの俺だったらもっと求めてキスを……いや、それ以上しちゃう場面だったんだろうけど、今日はデートだから。
一応、我慢する。
城の外でのデートは久しぶりだから。
「さ、行こうか」
口元を緩める俺の表情に釣られて、彼女も笑みをこぼす。
大好きな優しい笑顔。
再び、どちらからともなく歩き出す。
ふたりの足音が俺の背の高さほどある薔薇の迷路に反響している。
「星は勿論だけど、薔薇もとっても綺麗ね」
「そうだね」
「薔薇の棘って痛いのかな?」
「んーどうかな。俺が噛みつく方が痛いんじゃないかな?……試してみる?」
「噛みつかれるのは……どれくらい痛いか知ってるからいい」
「ふふっ、そりゃあ毎日してればね。いたーい、けど、きもちいーやつ」
「う……うん……」
ちょっとからかえば彼女が照れたように俯く。
散々体を暴いて甘い声を漏らして囁き合って縺れ合っている仲なのに、ベッドの上以外だと、彼女はあまりそういうのは得意ではないらしい。
俺の血を飲んだ後の彼女の妖艶さはまるでここに咲いている薔薇のようで。
その艶めかしい振舞いからは想像できないほどに、今は可憐な野の花のよう。
どっちの彼女も大好きだから、
これからも変わらないでいて欲しいと思う。
言葉が途切れ、ざくざくと地を踏む足音だけがしばらく響く。
「ねぇ、俺がいま何を考えると思う?」
歩きながら彼女に問いかける。
「うーん……わからないわ」
「んーとね。この薔薇の茎で編んだロープできみを縛って、きみがそれを解こうと暴れたときにできた傷から滲む血を、少しずつ舐める遊びがしたいなって」
「え!?」
声をあげた瞬間に思わず手を解こうとしたきみの指をもう1度しっかり絡める。
「楽しそうじゃん?」
「~~~~!!」
その手のひらを親指で意味ありげにさすれば、ますますきみは逃げようとする。
俺は楽しくなって思わず笑みをこぼした。
「動けないきみにね、気持ち良くなっちゃうこといっぱいしてあげて、一緒に血も吸ってあげるの。ふふっ、きみ、気持ち良すぎて、きっとおかしくなっちゃうね」
「だ、だめだよ!そんなの!!」
きみはまた俯いてしまう。
「なんで?」
ああ、そんなことができたらどんなに楽しいだろうか。
吸血鬼になった彼女の体は人間だった頃とは比べ物にならないほど強くなっている。
俺が提案した行為なんか刹那の戯れみたいなものだ。
小さな痛みは快楽を煽ることを知っているし、彼女がそれを嫌いではないことも一緒に過ごしてきた時間の中で学んでいる。
彼女を拘束できれば、独り占めできるし、いつも恥ずかしがってやってくれないことだってできちゃうかも。言葉で、唇で、指で、舌で、きみが気を失うまで愛し続けるんだ。
どうかな?
「……そしたら……私がクロードに触れないから……だめなの」
「っ……!」
思いがけない言葉に、俺の指の動きが止まる。
瞬きするのを忘れたみたいにじっときみの後頭部を見つめ続け、気がつけばその体を抱きしめていた。
「もう……っ、どうしてきみはそんなに可愛いの?こんなところで俺を煽ってどうするの?」
「く……っ、苦しいよ、クロード……離して……」
「やだ。だめ……苦しいのはこっちだよ……っ、ねぇ、ここで押し倒されたい?」
「え、ええ!?」
「責任とって」
繋いだままの手を導く。言葉の意味がちゃんと伝わるように。
「!!」
「ね? ねぇ、ここで押し倒されるのと部屋で押し倒されるのどっちがいい?」
「ええ!?」
「昨日おあずけ喰らったから仕方ないじゃん。それに煽ってきたのはきみの方」
「そんなつもりじゃ……!!」
「あー、だめだめ、我慢できない。帰ろう、一緒に」
「……っ」
「いいでしょ?」
少しの沈黙の後、小さく頷く彼女。
これで結局今日のデートも城の中。
きっと俺はきみさえいればいいんだ。
きみの願いはなんだって叶えたいけれど、
俺の願いはただひとつ。
きみと永遠に一緒にいること。
愛してるよ。
written by Shirahase